テュフ ラインランド規格 H2.21: 第三者機関による再生可能・低炭素水素燃料の認証
産業用グリーン水素の需要は、世界中でますます増加しています。テュフ ラインランドは、未来のエネルギーキャリアとしての水素開発を積極的にサポートしています。「テュフ ラインランド規格H2.21再生可能・低炭素水素燃料」は、産業界、市場関係者、利害関係者に向けた、グリーン水素認証のための新たな実用的な仕様です。
同規格は、再生可能・低炭素水素の製造者、販売者、使用者が、環境に配慮して水素を製造していることを証明するものです。事業に対する顧客からの信頼性を高め、競合他社に対する優位性を確保することができます。
テュフ ラインランド規格H2.21は、EUにおける現時点での規制動向に合わせ、温室効果ガス排出削減の閾値を比較対照値(94g CO2-eq/MJ)の70%と定義し、水素の分類を次のように大きく2つに分類しています。
- 再生可能水素は、再生可能な非生物的資源に由来する電力を使用して、水または水溶液を電気分解(例:クロルアルカリ電気分解)することにより製造される水素です。削減目標は、RED II*で規定される比較対象値(94g CO2-eq/MJ)の70%以上でなければなりません。
- 低炭素水素には、すべての水素製造方法が該当するため、すべての技術やプ ロセスが認証対象になります。削減目標は、比較対象値(94g CO2-eq/MJ) の70%以上でなければなりません。
上記に加え、他の特定の基準を満たせば、グリーン水素、RFNBO**、RCF***、ブルー水素(CCS/CCU)、ターコイズ水素、ピンク水素、カーボンニュートラル水素に関する基準についても追加認証を受けることができます。
また同規格は、アンモニア、メタン、メタノールなどの水素派生物にも適用可能です。
テュフ ラインランド規格H2.21 再生可能・低炭素水素燃料は、 こちら からダウンロードできます。
*RED II:再生可能エネルギー指令(第二版)再生可能な資源に由来するエネルギーの利用促進に関する基準(EU)2018/2001。欧州議会および理事会の補足指令(EU)2018/2001(RED II、第28条、委任法令)およびその付属書、RED IIの改正を含む。
**RFNBO: 非生物由来の再生可能燃料 - RED II 第2条§35に基づく。
***RCF:再生炭素燃料 - RED II 第2条§36 に基づく。
なぜグリーン水素認証が必要か?
水素は、科学的側面、産業的側面、そして政治的な側面からも、パリ協定の気候目標達成に不可欠な要素であると考えられています。水素は、高エネルギーな気体であることに加え、燃焼しても材料として使用してもCO2を発生させません。そのため化石燃料に代わる、気候変動を防ぐ燃料として最適です。欧州グリーンディールやドイツ国家水素戦略は、より幅広い気候政策との関連においてこの点を重視し、将来のエネルギーキャリアとして水素の利用を推進しています。しかし、水素を製造するには大量にエネルギーを消費するという問題があり、これまでは化石由来のエネルギーキャリアが使用されてきました。したがって、化石由来のエネルギーキャリアに置き換わり、温室効果ガスを削減する可能性を持っているのは、水素を持続可能な形で製造し、利用した場合に限られます。この認証は、認証を受けた水素または水素派生物の使用が、温室効果ガスの排出削減につながることの第三者機関による証明として国際的に通用します
認証の内容と手続き
テュフ ラインランドの認証では、製造工程の最初の段階から個々の納入場所まで、あらゆる工程が審査の対象です。
- 製造方法(電気分解、水蒸気改質、熱分解など)
- 輸送方法(ガスネットワーク/パイプライン、水素タンクなど)
- 使用用途(モビリティ向け給電、低炭素な工業生産、発電・熱利用など)の検査と認証も可能です。サプライチェーンを部分ごとに認証することも可能です。要求分析の際に、個々のニーズや要求事項に関する調整を行います。
テュフ ラインランドの再生可能・低炭素水素燃料に関する認証を取得することにより、水素のライフサイクルステージ(製造、流通、使用)にかかわりなく、気候中立な方法で水素を供給していることを証明することができます。
テュフ ラインランドの認証の利点
カーボンニュートラルな水素に対する第三者認証を取得することは、環境に配慮した製品にエネルギーとして使用できることを透明性をもって証明できることになります。また認証の取得は、サステナビリティ戦略を外部に発信することにもなり、環境に配慮する企業であることや、サステナブルなエネルギー供給に対する貢献をアピールできます。これは競争力の向上だけでなく、顧客やビジネスパートナーからの信頼強化にもつながります。
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Bringing Clean Hydrogen to Life, Safely – a sustainable pathway for the energy transition[英語] | 383 KB | ダウンロード |
再生可能・低炭素水素燃料のテストマークで透明性を確保
認証を取得すると、認証書が発行され、テストマークを使用することができます。テストマークに表示される「キーワード」により、一目で認証の内容がわかります。審査の主要構成要素に基づき、以下のようなキーワードを含むテストマークを発行します。
再生可能水素は、再生可能な非生物的資源に由来する電力を使用して、水または水溶液を電気分解(例:クロルアルカリ電気分解)することにより製造される水素です。削減目標は、比較対象値(94g CO2-eq/MJ)の70%以上でなければなりません。
- グリーン水素:再生可能な非生物的資源に由来する電力のみを使用して、水または水溶液を電気分解(例:クロルアルカリ電気分解)することにより製造される再生可能水素です。
- RFNBO(RED II):EUのRED II委任法令が定める追加基準に適合する再生可能水素です。
- RCF(RED II):EUのRED II委任法令が定める基準を満たす再生可能水素および再生炭素を原料とする水素派生物です。
低炭素水素には、すべての水素製造方法が該当するため、すべての技術やプロセスが認証の対象になります。削減目標は、比較対象値(94g CO2-eq/MJ)の70%以上でなければなりません。
- ブルー水素(CCS): 低炭素水素を製造する際に発生するCO2を回収し、永久に貯蔵します(二酸化炭素回収・貯留 /CCS)。
- ブルー水素(CCU):低炭素水素の製造時に排出されるCO2を回収・処理して化合物または鉱物として永久に固定します。
- ターコイズ水素 : 低炭素水素をメタンの熱分解によって生成し、排出された元素状炭素を永久に固定します。
- ピンク水素:原子力発電による電力を用いて水や水溶液を電気分解(クロルアルカリ電気分解など)し、低炭素水素を製造します。
再生可能水素、低炭素水素、カーボンニュートラル水素の違い
水素は、工業的な規模において、さまざまな方法で製造することが可能です。その製造方法によって、また排出されるCO2の処理方法によって、水素はさまざまなカラーに色分けされています。
再生可能水素は、再生可能な非生物的資源に由来する電力を使用して、水または水溶液を電気分解(例:クロルアルカリ電気分解)することにより製造される水素です。削減目標は、RED IIで規定される比較対象値(94g CO2-eq/MJ)の70%以上でなければなりません。
低炭素水素には、すべての水素製造方法が該当するため、すべての技術やプロセスが認証の対象になります。削減目標は、比較対象値(94g CO2-eq/MJ)の70%以上でなければなりません。
カーボンニュートラル水素は、水素の製造によるCO2の排出量が他の手段により相殺されていることを意味します。カーボンニュートラル水素には、国際的に認められた気候変動対策プログラムが発行するCO2削減証書や、確立された取引システムを通じた排出権の購入・償却などのオフセットの仕組みが必要です。